ATOがあなたの銀行口座からお金を差し引くことはできますか?あなたには知る権利があります。

最近Your Right to Know(あなたには知る権利がある)キャンペーンの一環として相次いで放送されている報道の自由に関する広告を目にしたことがあると思います。このゴールデンタイムの広告では、オーストラリア国税局(ATO)が、通知することなくあなたの銀行口座からお金を差し引くことができると宣伝しています。ここで問題となるのが、あなたはATOがどのような権限を持っているのか知っているか、ということです。

ATOはオーストラリアで最も権力のある機関の一つで、非常に幅広い範囲において総合的な権限を持っています。過去数年間における取り組みとして、納税者と協力することで彼らが税金を納付する義務を果たしているかを確実にすることがあります。しかし、同機関による理解も長続きすることはなく、納税者がATOと協力する姿勢を見せない場合や、合意した支払い計画に対する義務を繰り返し怠る、または状況を解決するための手段(例えば、滞納している税金を支払うために負債を負うことで支払い意欲を見せる)を講じない場合、ATOは処置を取り始めます。また、資本逃避や流出のリスクがあり銀行口座などの資産を確保する必要性があると考えられる場合、ATOが立ち入ることができる場合もあります。

ATOの主な目的は、連邦政府の歳入の多くを確保することです。今年公表された連邦の租税行政総監の報告書では、以下の内容が記載されています。

2016-17年度において、

・納付義務のある税金の88%が期日までに納税され、

・税金の7%(334億豪ドル)が期日後90日以内に納税され、

・税金の1.3%(61億豪ドル)が期日後1年以内に納税され、

・150億豪ドルが期日後1年経過しても未納のままでした。

2016-17年度末において、納付義務のある税金の未納合計金額は209億ドルでした。

以下、税金がきちんと納付されていることを確実にするためにATOが行使できる権限です。

あなたの代理として貨幣を保有する者に対する差押予告書の発行-例えば、銀行が挙げられます。賃金労働者に関して、あなたが滞納している税金を支払い終わるまで、ATOは雇用主にあなたの給与の一部を同機関に支払うよう要求できます。通常は、給与の最大30%を要求できると制限されています。あなたが事業活動を行なっている上で税金を滞納している場合、ATOは必要に応じて事業設備を押収できます。

取締役に対するペナルティー通知-取締役は、Pay As You Go Withholding (PAYGW)と呼ばれる源泉徴収義務の不履行や年金保証税の未納に対する罰則を個人的に受ける場合があります。政府はこの制度を拡大して、財・サービス税(GST)の負債を補うことも検討しています。この負債が支払われない場合、ATOは取締役に対するペナルティー通知を発行し、法的措置を講じる(さらに取締役による納付を保留する)準備をします。

年金保証の支払い命令-雇用主が年金保証の支払い命令を受けた場合、指定された期日内に未払い分の年金保証税を支払う必要があります。この命令に応じないことは犯罪行為であり、刑罰および/または懲役の対象となる可能性があります。

資産凍結命令を課す–例えば、銀行口座が挙げられます。つまり、特にあなたが

代替収入源を保有していると判断された場合、ATOは通知することなく銀行口座の凍結、また必要であれば押収することができます。この凍結命令は、ATOの独断で執行することはできず、裁判所の許可が必要である。

令状または執行許可状、もしくは押収と売却の令状発行-例えば、滞納されている税金を支払うために、ATOは特定の資産を売却することをあなたに命じることができます。

清算する-あなたの会社を清算する、または破産させます。ほとんどの納税者はATOがどの程度強硬的に行動するかを知りません。ATOは紛争が解決する前に清算手続きを開始できます。2017-18年度に、同機関は納税者470人を破産させ、企業1,282社を清算しました。ATOは、多くのケースにおいて清算手段を講じることで税金問題に目を背ける行為をなくし、ATOまたは他の機関に対する負債の増加を防ぐ効果があると主張しています。

書類仕事がきちんと行われていることを常に確認しましょう。ATOにとって疑問が生じる、または同機関が「何か正しくない」と疑惑を持った場合、あなたが応答しなければなりません。もし応答に時間を要するもしくは十分な証拠を提出できない場合、状況が悪化するだけでしょう。

ATOは通知することなくあなたの銀行口座からお金を差し引くことはできますか?法的規制のもと、鋭く追及してくるでしょう。

年金保証の拠出金計算に関する新しい規則

2020年7月1日から新しい規則が適用され、雇用主が支払う年金保証金(SG)を減額するために従業員の給与から天引きする制度(Salary Sacrifice)を利用できなくなります。

現在の規則を用いて、一部の雇用主はSGを拠出するにあたり従業員の給与から天引きする制度を利用しています。現時点では、雇用主は「通常の給与」(OTE: Ordinary Time Earnings)の9.5%を拠出する義務があり、拠出額をOTEに含めるかどうか選択することが可能です。

新しい規則では、従業員のOTEベースの9.5% をSGとすると定められています。OTEベースは、従業員のOTEと退職年金拠出のためにOTEより天引きされた金額を含みます。例を見てみましょう。

パブロさんの四半期のOTEは$15,000で、通常$1,425($15,000 x 9.5%)がSGとして拠出されます。そこで、彼が同四半期に$1,000を給与から天引きすることで、退職年金拠出額は$2,425に増加します。

しかしパブロさんの雇用主は、給与から天引きされた額($1,000)を利用することでSG拠出義務を果たそうとします。これによって合計拠出額が$1,425となり、そのうちの$1,000はパブロさんが給与から天引きした金額となります。

改正案によると、パブロさんが給与から$1,000を天引きしても、雇用主からの拠出額が下がることがなくなります。今回の例では、拠出割合が2.83%($425 / $15,000 x 100)まで引き下がることになります。雇用主は従業員の給与ベースの9.5%を拠出する義務があるため、SGの最低拠出額を満たすために6.67%の金額を追加して拠出する必要があります。これは、雇用主が約$1,000(6.67% x $15,000)の拠出不足金を抱えていると言えます。

給与から天引きされた額によって雇用主からの拠出額が下がることがなくなるため、パブロさんの雇用主は拠出不足金の発生と年金保証税の課税を避けるために、給与から天引きされた$1,000に加えて$1,425(雇用主負担額)を拠出する必要があります。また改正案では、雇用主がSG拠出義務を果たしておらず年金保証税が課された場合に、拠出不足金が新しいOTEベースで計算されていることを明確にします。

キャピタルゲイン税(CGT)と住宅 – 海外駐在員と外国人が再び対象へ

オーストラリア連邦政府が豪州非居住者に対する主居住者免除資格の撤廃計画を改めて発表しました。これにより、海外駐在員と豪州非居住者に影響を及ぼすと考えられます。

2017-18年度連邦政府予算案において、オーストラリア連邦政府が税務上の豪州非居住者に対して主居住者免除資格を撤廃することを発表しました。この不当な措置は議会で提案されましたが、可決には至りませんでした。選挙後に議会を再度開催し、連邦政府は修正案を提示しました。

提示された修正案は、最初に予算案が発表された2017年5月9日より適用されるため、すでに売却されている不動産に影響を及ぼす可能性があります。しかし、2020年6月30日までのCGT事象に関しては経過規定が適用され、2017年5月9日以前からそのCGT事象までの期間に不動産を継続的に所有していた場合に限り、既存の規定が適用されます。

つまり、2017年5月9日から売却日まで不動産を所有している場合、既存ルールが適用される可能性があります。

今回の措置が議会を通過した場合、豪州非居住者は、不動産の保有期間に豪州居住者であったかどうかにかかわらず、不動産販売にかかわる主居住者免除を受けられなくなります。

駐在員に関しては、個人が6年間またはより短期間において豪州非居住者であり、外国居住中にライフイベントが発生した場合は例外措置が適用されます。この場合の「ライフイベント」とは、個人または特定の家族による末期的疾患の罹患、特定の家族の死や結婚、またはデファクト(事実婚)関係の解消などを言います。つまり、あなたが5年間海外勤務をしている間に配偶者が死亡した場合、豪州国内の主たる住居に対して免除が適用されることもあります。

豪州非居住者の場合、法案が議会を通過すると以下のような大きな影響が出てきます。

・主たる居住に関する規定において、豪州非居住者は一部または全額免除の資格を失う

・豪州非居住者は、一般的に外国居住者用の税率で課税される(つまり、免税枠なし、または一部のみ)

・CGT割引率が50%以下へ引き下げられる

・不動産が賃貸された当時の市場価値と比較して、その不動産の原価を上げるために適用される置換原価制度を利用できなくなる可能性が高まる

・外国居住者に適用される源泉徴収の規則により、売主のキャッシュフローに影響が及ぶ

現在、個人は一般的に主たる住居の販売に関してCGT課税対象となっていません。もしその不動産をある一部の保有期間のみ主たる住居として利用していた、またはその不動産を収入源する(例 不動産を事務所として利用する、または一部を賃貸する)場合、一部免除が適用されることもあります。さらに、住居を引っ越した際に他の住居を主たる住居として申請しない場合、その住居を賃貸する、もしくは無期限に賃貸しない場合においても、最大6年間主たる住居として扱うことができます。これを6年間ルール(the ‘absence rule’)と呼んでいます。

主居住者免除は、税務上の豪州居住者、非居住者、一時居住者である個人に対して現在適用されます。2019年財務省法修正法案(住宅取得者の負担軽減措置)(Treasury Laws Amendment (Reducing Pressure on Housing Affordability Measures) Bill 2019)は、下院へ提出する段階にあり、まだ法律になっていません。

従業員に適切な給与額を支払っていますか? ウールワース、2億豪ドルの過少払いと賠償金

ウールワースが従業員に対して給与を過少払いしていた問題で最近話題となっています。同社は従業員5,700人に対して賠償金合わせて2億〜3億豪ドル(課税前)に及ぶ過少払いが行われていたことを明らかにし、その損害賠償額が最高額になると考えられています。

今回の問題は新たに労働協約を適用する際に行われた2年に一度の調査によって発覚しましたが、現代化された労使裁定が2010年に適用されて以降、給与が過少に支払われていた可能性があります。

ウールワースは「調査によって、労働時間と勤務日時が一部の店舗従業員の給与設定で適切に反映されていなかったことが分かった」と声明を発表しました

初回の調査で影響を受けていると判断された従業員に対して、クリスマス前に給与未払い分の一時的な返済が行われる予定です。また、ウールワースは被害を受けた全ての従業員に対して、賠償金全額を可能な限り迅速に支払うと述べています。

私たちは、従業員に正しい給与額がきちんと支払われていることを確認する重要性を強く呼びかけています。従業員に適当な給与額が支払われなかった場合、単に未払い分を支払えば解決できるわけではありません。特にスーパーアニュエーション(退職年金基金)の過少払いが発覚した場合、膨大な罰金の支払いが課せられます。


あなたが従業員に適当な給与額を支払えているかを確認する場合は、フェアワークオンブズマン(Fair Work Ombudsman)給与と労働条件(Pay and Conditions Tool)をご参照ください。

ゼロ金利政策とその影響


オーストラリア準備銀行(RBA)は、政策金利を過去最低水準まで再び引き下げることを発表しました。シドニーを拠点とする会計事務所Easton Wealth(イーストン・ウェルス)の経済専門家Emmanuel Calligeris(エマニュエル・カリガリス)氏が、金利引き下げの影響について分析します。

オーストラリアと世界の変動性

近年、金融市場は渦中にある貿易戦争の動向によって影響を受けており、過去2ヵ月間における市場の変動性が高まりました。貿易戦争による景気後退を反映して政策金利が下落したことから、7月の株式市場は上昇しました。しかし、ドイツで第2四半期にマイナス成長を記録したこと、さらにドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)が第3四半期も景気後退が続く可能性を警告したことなど、金融市場の変動性を引き起こす問題が他にもあります。2四半期連続してマイナス成長を記録すると景気後退と判断されるため、上記の傾向に着目することが重要です。欧州最大の経済大国であるドイツが景気後退に陥ることで、その他の欧州諸国に対して、どのような影響を及ぼすことになるかという疑問が浮上してきます。景気が後退するにつれて、失業率が上昇し投資が減少します。さらに、政府は金利低下を受けて経済を回復させるために、投資を余儀なくされます。幸いなことに、財政支出により来年度の経済成長率が0.7%拡大する可能性が出てきたことで、その他欧州諸国における景気後退を回避することが期待されています。欧州のリスクとして、英国の合意なきEU離脱が懸念されています。英国のEU離脱(ブレグジット)問題により、欧州連合で大きな変動率が発生しました。この合意なき離脱によって、フランス、ドイツ、オランダの輸出に悪影響を及ぼす可能性があります。

日本のGDP成長率は鈍化しており、輸出の伸び率が低下していることが要因としてあります。香港では、この成長鈍化がさらに悪化することが予想されます。理由として、現在問題となっている暴動が、香港を含む先進国にとって経済成長の重要な要素である個人消費を抑制しているからです。オーストラリアでは、家計債務の増加と賃金上昇率の低迷による消費抑制が、経済成長鈍化につながっています。2つの重要な要因として、物価高とインフラ投資があります。鉄鉱石に関しては、ブラジルで発生した鉱山ダム決壊事故により供給が停止したことで、鉄鉱石価格が高騰しました。しかし、現在は供給が再開されて通常価格へと戻りつつあります。これは、オーストラリアの鉄鉱石による輸出収益が来年度における経済成長のけん引役となる可能性が低くなることを示しています。さらに、干ばつ問題が解消されないかぎり、農産物の輸出で成長鈍化を補うことは難しいと考えられます。

8月上旬、貿易戦争の激化によりオーストラリアと米国の株式市場が下落し、オーストラリアの定期預金と債券の金利が過去最低水準まで下落しました。低金利の状態が続くと、歳出が今後の経済成長の重要な推進力となるでしょう。

世界経済成長率の鈍化に応じて、米国の政策金利は迅速に調整されました。歴史的に、米国10年国債利回り(金利)が米国2年国債利回りを下回ると、米国の景気が後退する可能性が高い予兆と考えられています。この現象を逆イールドカーブと呼びます。景気後退の可能性が確定しているわけではありませんが、逆イールドカーブは、連邦準備制度理事会が来年中に政策金利を大幅に引き下げる可能性が高いことを示唆しています。オーストラリアでは、RBAが政策金利のオフィシャルキャッシュレートを2度引き下げ、過去最低水準である1%としました。RBAは、賃金上昇率がインフレ見通しを脅かすことはなく、さらに低失業率においても安定した経済を動かすことは可能であると考えます。これは、景気を過熱することなく金融政策(金利)を長期的に引き下げることが可能であることを、本質的に意味します。つまり、2019年後半から2020年前半にかけて政策金利はさらに低くなる見通しであり、一部の専門家は、その時期までに0.50%までに下落すると予測しています。この低金利を反映して、定期預金金利も低下しました。

低金利の影響

政策金利の低下によって、預金者にジレンマが生じています。金利が下がると、同水準の資産収入額を維持するためにより多くの資金が必要となります。以下の表をご覧ください。

Capital prices and interest rates
Investment amount ($)Fixed income ($)Interest rate
500,000.0050,00010%
625,000.0050,0008%
833,333.3350,0006%
1,250,000.0050,0004%
2,500,000.0050,0002%

この表は、金利が10%の時に投資家が50万ドルを投資することで、資産収入として5万ドル獲得できることを示しています。金利が6%に落ち込んだ場合、同じく資産収入として5万ドルを生成するには、投資額約83万3千ドルが必要となります。さらに金利が2%の場合、同額の資産収入を生成するためには、250万ドル必要となります。

異なる視点で考えると、資産収入5万ドルを生成できる投資を所有している場合、金利額が低いほど投資価格は上昇します。このケースは、過去30年間における債券と、世界金融危機後10年間に配当成長を維持した不動産と株式に当てはまります。投資家が自己資本額を増やさずに50万ドルを投資した場合(例 定期預金)金利2%で1万ドルの資本収入しか生成できないでしょう。

低利回り環境での投資

これまで不動産と株式投資家は、低金利環境に恩恵を受けてきました。彼らは、将来受け取れる利回り率の低下よりも、金利低下より生じた市場の利益に注目してきました。私たちは現在、将来の利回り率低下が見込まれる環境下にあり、そのような状況において「どこに投資すべきか」という疑問に直面しています。より高い利回りを獲得する最も容易な方法は、国内株式や国外株式などの伝統的資産や不動産への投資を増やすことです。しかし、投資家がより高い利回りを求めるには、より高いリスクを負わなければなりません。金融資産全体のバランスが過度に崩れておらず、投資家が資産配分において規律を維持することが重要です。将来財政支出が増加する場合、インフラ部門に注目することが短期的な見方において適切かもしれません。

株の銘柄選択に関して、近年の不動産と株価上昇の影響により、これらの資産クラスが不当な企業価値評価を得ました。その結果、この見解を行った一部の資産運用専門家にとって、それぞれの運用成績が指標を下回ることとなりました。私たちは、低コストのインデックスファンドと慎重な選択が不可欠なアクティブファンドを組み合わせる方法を用いると、相対パフォーマンスが向上するだけでなく、コスト削減にもつながると考えています。株式や不動産は短期間で完全に価値が決定されますが、金融資産の一部として保有しておくべきでしょう。投資家は短期間の取引について慎重になるべきですが、弱気相場にエクスポージャーを増やすことに目を向けるべきです。今後数年間で、株式と不動産市場において低成長・低インフレの状況の中で低利回りを獲得することが標準となるでしょう。つまり、緩やかな経済成長が見られ、最適な配当金を獲得できる可能性があります。