年金保証の拠出金計算に関する新しい規則

2020年7月1日から新しい規則が適用され、雇用主が支払う年金保証金(SG)を減額するために従業員の給与から天引きする制度(Salary Sacrifice)を利用できなくなります。

現在の規則を用いて、一部の雇用主はSGを拠出するにあたり従業員の給与から天引きする制度を利用しています。現時点では、雇用主は「通常の給与」(OTE: Ordinary Time Earnings)の9.5%を拠出する義務があり、拠出額をOTEに含めるかどうか選択することが可能です。

新しい規則では、従業員のOTEベースの9.5% をSGとすると定められています。OTEベースは、従業員のOTEと退職年金拠出のためにOTEより天引きされた金額を含みます。例を見てみましょう。

パブロさんの四半期のOTEは$15,000で、通常$1,425($15,000 x 9.5%)がSGとして拠出されます。そこで、彼が同四半期に$1,000を給与から天引きすることで、退職年金拠出額は$2,425に増加します。

しかしパブロさんの雇用主は、給与から天引きされた額($1,000)を利用することでSG拠出義務を果たそうとします。これによって合計拠出額が$1,425となり、そのうちの$1,000はパブロさんが給与から天引きした金額となります。

改正案によると、パブロさんが給与から$1,000を天引きしても、雇用主からの拠出額が下がることがなくなります。今回の例では、拠出割合が2.83%($425 / $15,000 x 100)まで引き下がることになります。雇用主は従業員の給与ベースの9.5%を拠出する義務があるため、SGの最低拠出額を満たすために6.67%の金額を追加して拠出する必要があります。これは、雇用主が約$1,000(6.67% x $15,000)の拠出不足金を抱えていると言えます。

給与から天引きされた額によって雇用主からの拠出額が下がることがなくなるため、パブロさんの雇用主は拠出不足金の発生と年金保証税の課税を避けるために、給与から天引きされた$1,000に加えて$1,425(雇用主負担額)を拠出する必要があります。また改正案では、雇用主がSG拠出義務を果たしておらず年金保証税が課された場合に、拠出不足金が新しいOTEベースで計算されていることを明確にします。

キャピタルゲイン税(CGT)と住宅 – 海外駐在員と外国人が再び対象へ

オーストラリア連邦政府が豪州非居住者に対する主居住者免除資格の撤廃計画を改めて発表しました。これにより、海外駐在員と豪州非居住者に影響を及ぼすと考えられます。

2017-18年度連邦政府予算案において、オーストラリア連邦政府が税務上の豪州非居住者に対して主居住者免除資格を撤廃することを発表しました。この不当な措置は議会で提案されましたが、可決には至りませんでした。選挙後に議会を再度開催し、連邦政府は修正案を提示しました。

提示された修正案は、最初に予算案が発表された2017年5月9日より適用されるため、すでに売却されている不動産に影響を及ぼす可能性があります。しかし、2020年6月30日までのCGT事象に関しては経過規定が適用され、2017年5月9日以前からそのCGT事象までの期間に不動産を継続的に所有していた場合に限り、既存の規定が適用されます。

つまり、2017年5月9日から売却日まで不動産を所有している場合、既存ルールが適用される可能性があります。

今回の措置が議会を通過した場合、豪州非居住者は、不動産の保有期間に豪州居住者であったかどうかにかかわらず、不動産販売にかかわる主居住者免除を受けられなくなります。

駐在員に関しては、個人が6年間またはより短期間において豪州非居住者であり、外国居住中にライフイベントが発生した場合は例外措置が適用されます。この場合の「ライフイベント」とは、個人または特定の家族による末期的疾患の罹患、特定の家族の死や結婚、またはデファクト(事実婚)関係の解消などを言います。つまり、あなたが5年間海外勤務をしている間に配偶者が死亡した場合、豪州国内の主たる住居に対して免除が適用されることもあります。

豪州非居住者の場合、法案が議会を通過すると以下のような大きな影響が出てきます。

・主たる居住に関する規定において、豪州非居住者は一部または全額免除の資格を失う

・豪州非居住者は、一般的に外国居住者用の税率で課税される(つまり、免税枠なし、または一部のみ)

・CGT割引率が50%以下へ引き下げられる

・不動産が賃貸された当時の市場価値と比較して、その不動産の原価を上げるために適用される置換原価制度を利用できなくなる可能性が高まる

・外国居住者に適用される源泉徴収の規則により、売主のキャッシュフローに影響が及ぶ

現在、個人は一般的に主たる住居の販売に関してCGT課税対象となっていません。もしその不動産をある一部の保有期間のみ主たる住居として利用していた、またはその不動産を収入源する(例 不動産を事務所として利用する、または一部を賃貸する)場合、一部免除が適用されることもあります。さらに、住居を引っ越した際に他の住居を主たる住居として申請しない場合、その住居を賃貸する、もしくは無期限に賃貸しない場合においても、最大6年間主たる住居として扱うことができます。これを6年間ルール(the ‘absence rule’)と呼んでいます。

主居住者免除は、税務上の豪州居住者、非居住者、一時居住者である個人に対して現在適用されます。2019年財務省法修正法案(住宅取得者の負担軽減措置)(Treasury Laws Amendment (Reducing Pressure on Housing Affordability Measures) Bill 2019)は、下院へ提出する段階にあり、まだ法律になっていません。

従業員に適切な給与額を支払っていますか? ウールワース、2億豪ドルの過少払いと賠償金

ウールワースが従業員に対して給与を過少払いしていた問題で最近話題となっています。同社は従業員5,700人に対して賠償金合わせて2億〜3億豪ドル(課税前)に及ぶ過少払いが行われていたことを明らかにし、その損害賠償額が最高額になると考えられています。

今回の問題は新たに労働協約を適用する際に行われた2年に一度の調査によって発覚しましたが、現代化された労使裁定が2010年に適用されて以降、給与が過少に支払われていた可能性があります。

ウールワースは「調査によって、労働時間と勤務日時が一部の店舗従業員の給与設定で適切に反映されていなかったことが分かった」と声明を発表しました

初回の調査で影響を受けていると判断された従業員に対して、クリスマス前に給与未払い分の一時的な返済が行われる予定です。また、ウールワースは被害を受けた全ての従業員に対して、賠償金全額を可能な限り迅速に支払うと述べています。

私たちは、従業員に正しい給与額がきちんと支払われていることを確認する重要性を強く呼びかけています。従業員に適当な給与額が支払われなかった場合、単に未払い分を支払えば解決できるわけではありません。特にスーパーアニュエーション(退職年金基金)の過少払いが発覚した場合、膨大な罰金の支払いが課せられます。


あなたが従業員に適当な給与額を支払えているかを確認する場合は、フェアワークオンブズマン(Fair Work Ombudsman)給与と労働条件(Pay and Conditions Tool)をご参照ください。