オーストラリアの事業形態についてー法人編

今回は三番目の法人の特徴についてご紹介します。

  1. 法人(Company)

法人とは自然人以外で権利、義務の主体として認められるもので、他の事業形態に比べ高い設立、管理費用を伴います。さらに法人は他の事業形態より多くの報告義務があります。法人は株主のものであり、取締役によって事業の経営が行われます。法人は資産保護の役割を果たしますが、法人が起こした行動、借入金等の最終責任は取締役に対して問われる可能性もあります。また法人はオーストラリア証券投資委員会(ASIC)により統制されています。

主立った法人の特徴は下記の通りです。

  • 法人はTFN(タックスファイルナンバー)の取得が義務付けられているのと、法人税の申告をする際にTFNを使用しなければなりません。
  • 法人がCorporate Act 2001(会社法2001)に登録している場合はABN(オーストラリアンビジネスナンバー)を取得する権利があります。会社法に登録して無い場合でも実際に事業を営んでいる場合はABNを取得する事が可能になります。
  • 年間の売上が7万5千ドルを超える場合はGST(消費税)登録の義務があります。
  • 事業で得たお金は法人のものであって、法人の事業を経営している個人が正式にお給料または配当以外で個人使用の為にお金を引き出す事は出来ません。
  • 会計年度末の法人税の申告が義務付けられています。
  • たいていの場合、昨年度の納税額に元付いて所得税を毎月または四半期毎に分けて納める事になります。
  • 定められた法人税率で納税しますが、一定の条件を満たしていればスモールビジネス用の譲許税率が適応されます。
  • 各従業員へ年金(スーパー)の支払義務があります。これはあなた自身が経営者、取締役である場合も含まれます。

以上が法人の特徴についての説明でした。

オーストラリアの事業形態についてーパートナーシップ編

今回は二番目のパートナーシップの特徴についてご紹介します。

  1. パートナーシップ(Partnership)

パートナーシップとは二人以上のグループ又は仲間同士が集まって事業を営み、事業で生じた利益または損失を分配する事業形態です。よくある例が友達同士、家族でパートナーシップを設立するなどです。この形態は比較的安価に設立および管理が出来ます。事業をパートナー同士で運営して、利益または損失を分けあいます。

スタート時に書面でのパートナーシップ同意書(以下同意書)または契約書を結んでおく事は必須ではありませんが、あった方が後々スムーズに運営出来るでしょう。同意書に含むべき内容はどの様に利益または損失を分け合うか、どの様に事業を運営、管理するのか等です。

またパートナー同士の意見が割れた時の為に誰が最終決断の権利があるのか、事業からの具体的な利益の分配の仕方、新しいパートナーを受け入れる場合、既存のパートナーが事業から手を引きたい場合等、面倒に思われるかも知れませんが後々のトラブルを避ける為に同意書を事前に結んでおく利点は十分にあります。また単純にパートナーの頭数で平等に利益または損失を分配するのでは無い場合、確定申告の際には同意書の存在が特に重要になります。

パートナーシップ内の各パートナーは従業員にはなりませんが、パートナーシップの事業形態で従業員を雇う事は可能です。各パートナーは各自の適確年金基金(スーパーファンド)への支払等の管理義務は各々で行う責任がありますが、事業で雇っている従業員へのスーパーの支払は必須です。

主立ったパートナーシップの特徴は下記の通りです。

  • 事業の利益、損失、管理、運営はパートナー同士で行う。
  • パートナーシップは独自のTFN(タックスファイルナンバー)を持っており、年度末に事業で生じた全ての収入、費用を含んだパートナーシップの確定申告をする必要がある。
  • 確定申告ではパートナーシップレベルで利益に対しての税金は支払いませんが、利益を分配しあったパートナー個人のレベルで課税される事になる。
  • 各パートナー個人に分配されたパートナーシップからの利益は個人税率で課税され、一定の条件を満たしていれば税額控除を受ける事ができる。
  • パートナーシップはABN(オーストラリアンビジネスナンバー)を登録する義務があり、全ての事業取引にはABNを使用しなければならない。
  • 年間の売上金額が7万5千ドルを超える場合、パートナーシップはGST(消費税)登録の義務がある。

個人事業主の場合と同じで、ここでも注意したいのが、パートナーシップの事業から各パートナーがお金を個人使用の為に引き出した場合、お給料として費用算入は出来ない事です。

以上がパートナーシップの特徴についての説明でした。

オーストラリアの事業形態についてー個人事業主編

オーストラリアで事業をする際には大きく分けて下記4つの事業形態を選ぶ事になります。4回に分けてそれぞれの持つ特徴をご紹介します。

  1. 個人事業主(Sole Trader)
  2. パートナーシップ(Partnership)
  3. 法人(Company)
  4. 信託またはトラスト(Trust)

この内のどれかの形態を選ぶ事により、税金の支払義務、資産保護、掛かるコストに影響しますので、しっかり理解した上で選択するのが賢明です。

しかし、状況の変化または事業が成長して今の形態に合わなくなった場合は変更することも可能です。例えば、個人事業主から始めて事業の成長に合わせて法人に切り換える等。それでは、初めに個人事業主からどういった特徴があるのかを見て行きましょう。

  1. 個人事業主(Sole Trader)

一番シンプルで安価に事業を始められる事業形態です。事業オーナーは一人で、その個人がで事業を管理する形態です。個人事業主は全ての事業局面において法的責任をその個人が全て負うことになります。従業員を雇う事は出来ますが、自分自身を雇う事は出来ません(自分自身にお給料を払う事は出来ない)。個人事業主は従業員への年金(スーパー)の支払義務があります。リタイア後の生活の為に自分自身のスーパーへの積立義務もあります。

主立った個人事業主の特徴は下記の通りです。

  • 個人のタックスファイルナンバー(TFN)を使って税務申告をする。
  • 事業で生じた全ての収入および費用を個人の確定申告書にて申告する。個人の申告書に事業用の申告欄があり、別で個人事業主用に確定申告する訳では無い。
  • オーストラリアンビジネスナンバー(ABN) の取得義務があり全ての事業取引にはABNを使用しなければならない。
  • もし事業の年間の売上が7万5千ドルを超える場合はGST(消費税)の登録義務がある。
  • 事業で生じた利益には個人税率が適応され、一定の条件を満たしていれば税額控除を受ける事ができる。
  • 年度末の確定申告の際に所得税を支払うために一定金額を積み立てておく必要があるが、大抵の場合は4半期ごとに所得税を国税局に仮払いしておく事になります。
  • 個人の適格年金基金(スーパーファンド)へ事前に知らせておけば、スーパーの支払は損金算入する事が出来ます。

注意したいのは事業からお金を引き出した場合にお給料として損金算入出来ない事です。

以上が個人事業主の特徴についての説明でした。

ネガティブギヤリングとは

ネガティブギヤリング (Negative Gearing) とは

投資物件をローンで購入して、入ってくる家賃収入から減価償却費、共益費、市税等の不動産管理費の合計を差引いた純利益が、ローンに対する利息の支払合計より少ない場合、その物件はネガティブギアの投資物件と言われます。英語では、”A rental property is negatively geared” です。

損失を出している投資物件は一見すると投資している意味が無いように思われますが、現時点 (2018年2月) オーストラリアでは、確定申告の際にその損失分をあなたのお給料または個人事業収入から差引くことができるのです。

被雇用者の場合は雇用主が被雇用者の代わりに税法で定められている分の源泉徴収税を被雇用者に支払う前に差引いて国税局に納めます(額面と手取りのお給料は違いますよね)。 個人事業主の場合は、自分で所得税仮払を去年度の課税対象所得に元付いて大抵、四半期ごとに納めます。

源泉徴収税は額面のお給料に対して納税されているので、確定申告の際に額面のお給料から投資物件の損失を差引くと課税対象所得が減り(ネガテイブギアが効いた状態)、税金を納め過ぎている分が国税局より返金されることになります。また所得との相殺に使い切らなかった投資物件の損失額は翌年に繰越すことができます。

長い目で見て不動産の価値が上がると予想される場合は、例えいま現在損失を出し続けていても、安定した収入がありネガティブギアリングにより納税額を減らせるのであれば買えるうちに買っておくという投資家は多いです。

現在ネガティブギアの投資物件をお持ちの被雇用者の方で、翌年の確定申告の際も返金が予想される場合は、国税局に雇用主へ源泉徴収税の減額を申請する事ができます(出来れば6月30日までに)。そうする事で、確定申告時に一回で多額な返金を受け取るより、定期的に受け取るお給料の手取りが増える方がキャッシュフローの管理がし易くなります。

以上が簡単なネガティブギアリングの説明でした。

減価償却費とは

減価償却費とは

通常、固定資産を購入した場合、一回で費用計上することは認められていません。ではどうやって費用計上していくかと言うと、その固定資産の法定耐用年数(*1)どおりに毎年費用計上していくことになります。これらに該当する固定資産を減価償却資産といいます。この費用は、下記全ての納税者に当てはまります。

- 大、中小、零細企業

- 個人事業主

- 不動産投資家

- 被雇用者、従業員

減価償却資産の法定耐用年数はそれぞれ決められていて毎年少しずつアップデートされます。ATO(オーストラリア国税局)のウェブサイトから表をダウンロードすることができます。しかしながら土地、流通在庫などは減価償却資産にはなりません。

 

一般的な減価償却のルールとは

簡素化された減価償却費ルール(*2)をのぞいて、一般的な減価償却のルールは下記の通りです。

- 大、中小、零細企業、個人事業主は100ドルまでは一回で費用計上可能

- 不動産投資家、被雇用者、従業員は300ドルまでは一回で費用計上可能

以上が簡単な減価償却費の説明となります。

 

(*1) 法定耐用年数は、機械や設備といった減価償却資産の法定上の使用可能な見積もり期間の事をいいます。

(*2) スモールビジネス用に景気刺激策によって作られた一時的に2万ドルまでの減価償却資産を一回で費用計上できるルール。ここではルールに関する説明は省きます。