フリンジベネフィット税(FBT)は、その複雑さと多くの事務処理が必要な事から、オーストラリアで最も嫌われている税金の1つです。新型コロナウィルスのロックダウンにより、多くの作業パターン等が変更され、さらに複雑な行程が追加されました。
フリンジベネフィットとは、企業が従業員や“アソシエイト”(配偶者や子供、友人など、従業員と何らかの関係のある人の事)に対しての「支払い」の事ですが、給料や賃金とは異なります。例をあげると
● 会社側からビジネスで使用する社用車や駐車場を従業員に提供
● 会社主催のクリスマスパーティーを催す等(従業員は掛かった費用は支払う義務はない)
● 割引料金でビジネスの商品やサービスを会社から提供して貰える
つまり日本で云うところの福利厚生にあたります。
もし事業がまだ FBT に登録されていない場合、フリンジベネフィットが提供されていたかどうかを理解する必要があります。何故なら一般的に、ATOはフリンジベネフィットに登録していない雇用主とデータにミスマッチがあった場合には、綿密に調査するからです。
FBT課税事業年度は3月31日になります。主要な問題点とオーストラリア税務局(ATO)のホットスポットを見ていきましょう。
FBTの対象外となるものは何ですか?
特定の福利厚生は、主に従業員の雇用の為に提供されている場合は、FBT規則から除外されます。
● 携帯用電子機器(例:ラップトップ、ipad、プリンター、GPSなど)。大企業は、従業員1人につき1台の携帯用電子機器の購入または払い戻しに制限されています。
● ノートパソコン、タブレット、仕事の書類や日記など、仕事で使用する為にこれらの機器を持ち運ぶためのハンドバッグ、ブリーフケース、小型のかばん。
もしこれらのバッグをプライベートと仕事の両方で使用している場合は、その用途に応じて振り分けが必要となり、FBTが全て免除されるわけではないと云う事を念頭に置いて下さい。
例えばグッチのバッグにたまにipadを入れて持ち運ぶケースには、ATOはフリンジベネフィット税を免除する事はないでしょう。(グッチは通常、会社では仕事の為に支給はされないでしょうし、ファッションとしてよりプライベートの用途が強いうえに、たまにipadを入れて持ち運んだとしても、仕事の要素としては見られないからです)
● Tools of trade.
また、従業員に提供されたアイテムやサービスが300ドル未満で、かつ一度限りのものであれば、一般的にはマイナーベネフィットに分類され、フリンジベネフィット税が免除されます
新型コロナとフリンジベネフィット税
ATOは、新型コロナが勤務形態や勤務条件に影響を与えた為、今年はFBTコンプライアンスへのアプローチ方法が変更されました。詳細は以下の通りになります。
航空券や宿泊施設などの緊急援助
従業員が新型コロナによる悪影響を受ける危険性があるため、従業員を緊急にサポ-トする為の緊急援助費用は、一般的にはFBTの対象とはなりません。
これには以下が含まれます。
● 従業員の転居に伴う費用(オーストラリアへの帰国のための航空券の支払いを含む)
● 従業員が制限(国内、州間または州内)のために移動ができない場合に、発生する食費および一時的な宿泊費。
● 従業員が自主隔離または強制隔離をする為に提供される福利厚生。
● 従業員の交通費(レンタカーや一時的な宿泊施設への交通費を含む)
フライ・イン・フライ・アウトの労働者の場合は、彼らが国境制限や渡航制限のために帰国できなかった時に、一時的な宿泊施設や食事などを提供する事が含まれます。
(FIFO / Fly in fly out=オーストラリアの大規模な鉱山地帯等で従業員を都心から離れた遠隔地に送り、一定の期間ごとに雇用する方法です。
例えば、従業員達は2週間連続で鉱山に泊まりがけで勤務し、次の2週間は休暇を取り、自宅に帰省する、といういわゆるシフト制の勤務体制の事です)
ヘルスケア
従業員へのインフルエンザ予防接種の提供は、会社側の従業員に対する感染予防及び健康管理とみなされる為、一般的にはFBTの対象外となります。しかし、その場合の治療は従業員が職場及び職場に隣接した場所で提供されている場合にのみ、FBTの免除対象になります。また継続的な医療費の費用は一般的に免除されません。
社用車
従業員の自宅に置かれている社用車は、一般的にFBTの対象となります。しかし、今年のFBTイヤ-は、新型コロナの影響により、多くの会社の駐車場や事業所が閉鎖されました。その結果、ATOはオペレ-ティングコストメゾット(運転コスト方法=実際に走行したぶんや、かかった費用によりFBT価値を算出する方法)を使用する雇用主に対して、「自宅の車庫に入れたまま全く運転されていない、または車を維持する目的で短時間しか運転されていない場合は、フリンジベネフィットとみなされない」としています。ただし車が使用されていないことを示す走行距離計のメータ-を維持する必要があります。
車を使用していた場合、一般的にはフリンジベネフィットが適用されますが、事業目的で使用していた場合は、その課税価格は下がります。また、車が事業のためだけに使用された場合は、課税価格がゼロになる事もあります。
ログブック
新型コロナウィルスの期間中は、運転のパターンに影響を与えている可能性が高く、ATOは12週間のログブック期間が中断されたところでいくつかの譲歩をしました。
● すでにログブック方式を使用していて、かつ既存のログブックを持っている場合は、これを使用する事ができます。ただし、ロックダウン期間中も含めて年間でどれだけ車が運転されたかを示すために、年間の走行距離計の記録を残しておく必要があります。
● ログブックを初めて使用した年である場合でも、12週間の正確なログブックを保管する必要があります。しかし、新型コロナが12週間の運転パターンに影響を与えた場合、ATOは運転パターンの変化を考慮して、ログブックに記載されている使用量を調整することを許可しています。
非営利のサラリーパッケージ
– 非営利の雇用主は、免除とリベート可能な上限を利用するために、サラリーパッケージの食事接待を従業員に提供することはよくある事です。ATOは、2020年3月1日時点で認可されている供給者によって食事が提供されている場合には、これらの取り決めを調査しないと表明しています。
キャンセル料– キャンセルされたイベントの返金不可の費用に関しては、従業員が自らイベントの費用を支払ったりまたは払い戻しを受けた場合を除き、FBTから免除されます。
つまり、雇用主がイベントの費用を支払った場合、そのキャンセル料は利益が生まなかった為、雇用主の義務となります。もし従業員がイベントの為に支払った場合は、キャンセル料は払い戻しを受けた従業員の義務になります。これは誰が取り決めをしたかにより、異なってきます。
ATOの危険信号
ATOが問題点をたやすく発見する方法は、ATOに提供された情報の中にミスマッチがある場合です。一般的な問題点としては、以下のようなものがあります。
● フリンジベネフィットが認められない交際費控除
– ATOが問題にすぐ気付くケースとして、フリンジベネフィットが単純に認められない場合になります。例えば雇用主が外食やクリケットの試合のチケットなど、高額な交際費の控除を請求した時です。一般的に交際費は控除対象から除外されるので、フリンジベネフィットの対象とみなされず、またGST控除も請求できません。
FBTでアクチュアルメソッドを使用している場合、もし提供されたベネフィットが300ドル未満であれば、FBTの対象外となるでしょう。まとめるとこうなります。
● クライアントに提供されたベネフィットは FBTの対象とはならない(従業員とアソシエイトのみが対象となります)
● 従業員に提供された小額の給付金(300ドル未満の価値のもの)は、一般的に FBTの対象外となります。(少額かつ不規則な場合)
● エンタ-テイメントについては控除を請求すべきではありませんしそれに伴い、GSTクレジットも通常は利用できません。
50/50メソッドを採用している場合は、食事接待費の50%がFBTの対象となりますので(少額のベネフィットの免除は適用されません)。費用の50%が控除対象となり、50%のGST控除を請求することが可能となります
従業員が自ら負担した金額はフリンジベネフィット税を軽減するが、確定申告では認識されない
従業員が負担した金額が、フリンジベネフィット税を軽減する場合(例えば、従業員が自動車のフリンジベネフィットに対して、自ら一部の代金を負担した場合)その金額を雇用主の確定申告で確認する必要があります。